これ、たぶん日本の小説で、俺がいちばんお気に入りで、いちばん怖かった小説。
(◎_◎;)

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『ぼっけえ、きょうてえ』(岩井志麻子 著、角川ホラー文庫、H14刊)


うちの姉ちゃんの悪意は物凄いで。体無い分、思いの念は強いでぇ。
……姉ちゃん、姉ちゃん、見してやりんさい。
ほれ。にぃぃって笑うたら、こねぇな化け物でもちいとは可愛かろう。
姉ちゃんが口にくわえとるんよ、金剛石の指輪。
妾(わたし)が欲しがったんじゃねぇ。姉ちゃんが欲しがったんじゃ。
こんな姿をしとるからじゃろうな、姉ちゃんは時々「きれいな物が見たい」て泣く。
ああ、そうじゃ。口では言えんけどな、頭と頭がくっついとるけん、妾と姉ちゃんは考えることが互いにわかるんじゃ。
巡査さんのことも姉ちゃんは考えようる。涙は出せんけどな。
妾らもう、尊いもんとか有り難いもんとか、そんなのはどうでもええんじゃ。今さら尊いもんを拝んでなんになろうか。
死ぬまでにきれいなきれいな、きれいな物が見たいんじゃ。
しゃあけど、こねぇな指輪、最初見たときは目がくらんだけど、今見たらつまらんな。ただの光る石じゃが。
これなら、あの水子がぎょうさん流れとった川原に転がっとった小石の方がええ。時々な、赤子の顔が浮いた石が見つかるんよ、みな笑い顔じゃ。親を恋しがっとるんじゃ。
そいでもこの指輪、姉ちゃんの歯にぴたっと合うてな、くわえとったら具合がええんじゃて。光にあてたら、それこそ小石よりはきらきら光って嬉しいそうじゃ。


岩井志麻子さん、凄いわ。おぞましく妖艶、淫靡。

引用が、あまりに何処もかしこも怖いから、それでもここもじゅうぶん『きょうてえ』。
(o_o)

寝る前に読めば、寝らんないかも。
Σ( ̄。 ̄ノ)ノ




※引用。




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