そばに寄っていくと、子供達が縄跳びをしているのが見えた。皆、パーティー用の洋服を着ている。子供の歌うメロディーは、不思議なことに、聞き覚えがある。

1……2……フレディーが来るよ 3……4……ドアに鍵を

5……6……十字架を手に 7……8……夜がふけても

9……10……眠らないで


「昔の童謡です。怖い鬼をやっつける時に、子供が歌うものなんですね。」

このフレディーの歌は、
【エルム街の悪夢】(ジェフリー・コッパー著、光山昌男 完訳 / 竹書房) 上下巻に出てくる日本語訳のそれ、

この小説版の情報はあまり見ないね。

上巻には、小説『エルム街の悪夢』('84/米) と、『エルム街の悪夢2・フレディーの復讐』('85) の縮訳版の前編、が収録されている。

下巻には、その『…2・復讐』の縮訳版 後編と、小説『エルム街の悪夢3・惨劇の館』('87)、
巻末には、『エルム街の悪夢4・"ザ・ドリームマスター"〜最後の反撃〜』('88)の情報、がある。

フレディー・クリューガーは皆様ご存知でしょ。ジェイソンと並び称されるホラー映画界のスター。

映画じゃほら、
ヒロイン、 ナンシーが入浴中につい うとうとして、その時 湯船から突き出た両ひざの間から、ザバッと鉄の爪が突き出すシーンとか、スポットで何度もやってた…あの映画のアイコン、

そんなフレディーの大活躍する『エルム街…
』が日本語訳の小説で 平成元年に出版されてました。

新書版てやつかな?
表紙はどちらもPart3『…ドリームマスター』の絵柄、

読みやすい、ちゃー読みやすい。こう…文章と文章の間隔が広く、どっちかと言えば…詩集?みたいに編集されてる、

定価680円で、今現在 上巻は結構お高い。下巻はお安く入手できます。あんま人気なさげだけど珍しいんじゃないかな?『エルム街…
』シリーズの小説…


……成すすべもない、窓にふらっと歩み寄った時、高々と電話のベルが鳴った。回線の切れた電話に、腕を伸ばす。
「もし、もし。」
「俺が、お前のボーイフレンドになったんだぜ。」
フレディ・クリューガーが、勝ち誇った声で高らかに言う。
言葉に詰ったナンシーの前で、電話の受話器が突如狂物の口に変様した。
その口から、長々と蛇のような舌が突き出てくる。驚異に怯えたナンシーの唇と唇の間へ
、怪物の舌が滑り込もうと、ずるずる突進して来た。慌てて、電話機を、壁に投げつけた。


これも有名なシーンだね、日本語訳だとこんな感じ。

※……グローブを手からはずすと、この怪物の慈悲も哀れみもない胸に向かって、ぐっと刺し入れた。
フレディーは悲鳴を上げると、床に崩れた。……


これさ、たぶん、小説 つーより、脚本を翻訳したもの?
これしか無いから貴重なんだけど、『エルム街の悪夢』の、きちんとし小説を読みたいよね、13金は小説版 出てんだし、

で、正直 あんまし読み応えは無かった。

2冊に上下に分ける意味もあまり感じられず、短編並にあっという間に読み終える。

でも、一ヶ所 ここだけ、なんだか好きなとこがあって…


カーステン・パーカーは、その夜、胸にしっかりと十字架を握りしめ、眠りについていた。パーカー家では、祝日に協会へ通う習慣もあったのだが、その目的は、慈善事業にある。
(中略)
だが、カーステンにとっては、天国への道をお祈りすることよりも、もっともっと重要な意味から、十字架を信じている。新興宗教を信仰している人々を母親は軽蔑していた。でもカーステンは、それはいい事だと思う。
世界の神々の中で、アラーや老子などのどれを信仰していても、結局は、同じ教えを学ぶような気がするのだった。


高野"十"座の、十、の意味合い?この字を自分の芸名に付けた意味が、ちょっとだけ深いものに感じられて…

ここはなんか、心に残しとこう、とか そんなふうに思った。

ホラー小説なんだけど、エルム街なんだけどね、

たまーに、
目が釘付けになる、離せない、そんなセンテンス(sentence) にぶつかる。

だから、どんなもの、事にも、これはダメ、無意味、なんてことはないよ。

俺はこの本、決して嫌いじゃない。再販してよ、とは言わないけど…


ずたずたの容貌に勝ち誇った色を浮かべ、ナンシーの目の玉一セン手前に、得意の爪をかざした。ナンシーは、ケロイド状にただれた顔に向かって唾を吐きかけた。
「死ね。死ぬんだ。ナンシー。」

男が、じゃりじゃりした声で言う。

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※ 引用。