レイ・ブラッドベリの短編、
映画【サウンド・オブ・サンダー】('05、米/独) の原作でもある、
『いかずちの音 (雷のような音)』(太陽の黄金の林檎 収録 / ハヤカワ文庫) を読んだ。

この版は、"ジョゼフ・ムニャーニ" つー、"カレル・ゼマーマン" 以来の変だな、と思う響きの名前の人の挿絵!があって、それが非常に美しい!

見惚れてしまう。(; ̄O ̄)

…映画は輸入版がどっかにあった気がするな 復習しとけばよかった、

あらずじはこんな風…

TIME SAFARI社が開発したタイムマシン、"TAMI"を使って、白亜紀の恐竜狩り、をするツアーが大人気の2055年、

その時間旅行でのちょっとした事故のどさくさに、
誰がが規則を破り、"1.3gの何か"、を過去から持ち帰った為に、未来が変わってしまう。

で、主人公は、犠牲を払って時間の修復をする。
つー 正確に覚えてないけどそんなような話 たぶん。

もっかい観直そうとは思ってんだけど、映画版は印象 薄くて…

いつもロックの主演の、
【ドゥーム(Doom)】('05)と混同してしまってダメ。
ダメなのは俺ね。
(⌒-⌒; )

原作の方はさすがブラッドベリ。凝縮して読ませる。
そして何より、その美しい文章…


燃えかすと灰の中から、埃と石炭のなかから
、黄金の山椒魚のように、昔の日々が、躍り出るかもしれない。バラは甘い香りを発散し
、白髪は黒くなり、皺は消える。
すべては種子に還り、初めに還り、死は逃げ去り、いくつもの太陽が西の空から昇っては東へ沈み、いくつもの月は反対側から欠け始め、魔法の箱のようにすべては際限もなく取り出され、ウサギは帽子から跳び出し、ありとあらゆるものは新鮮な死へ、死の種子へ、緑色の死へ、始まりの前の時へ還るのである
。この手で触れさえすれば、ただ触れさえすれば。


ブラッドベリのファンて訳じゃないからよくは知らないんだけど、
憂愁いを帯びた、って表現でよく評されてるよね。

何作品か…
【原子怪獣現る】('53 / 米)は中古DVDが手元にある。
【何かが道をやってくる】('83 / 米) は昔VHSで見たけど内容の記憶が無いなぁ…
【華氏451】('66 / 仏) は、これはもう最高!ビデオで(過去Log.) 何度も観た。
【刺青の男】('68 / 米) も、輸入版VHSを持ってるけどこっちは難解。字幕 欲しいところ…

こーして並べてみると、ファンなのか?ブラ
ッドベリの。
つーくらい映画は観てるのね、俺。
( ̄◇ ̄;)

あと小説は、幻とされてる『ダーク・カーニバル】からの編纂と、初期の埋れた作品を収蔵した、
日本独自の短編集『黒いカーニバル』くらいかな、手元にあるのって…

この映画原作『いかずちの音』は、映画との印象の違いとしては、

"なんかやたらと怒られた" 感の残る作品。て事かな?


「すまなかった」と、エッケルスは言った。
「立ちなさい!」と、トラビスが叫んだ。
エッケルスは立ち上がった。
「そこの道を一人で歩いて行きなさい」と、
トラビスはライフルを構えた。「このタイムマシンに戻って来てはいけない。あなたはここに置いていきます!」
レスペランスはトラビスの腕を摑んだ。「待ってくださいーーー」
「邪魔をするな!」トラビスはその手を振り払った。「この馬鹿のおかげで、わたしたちはあやうく殺されるところだった。しかし問題はそんなことじゃない。…(中略)」
「安心してください。この人は泥をいくらか蹴とはしただけでしょう」
「どうして分かる」と、トラビスは叫んだ。
「われわれには何も分からんのだよ!何もかも謎なんだ!出て行きなさい、エッケルス!
」エッケルスはシャツのボタンを、探った。「金はいくらでも払うよ、何十万ドルでも払いますよ!」
トラビスは、エッケルスの小切手帳をにらみつけ、唾を吐いた。「あそこへ出て行きなさい。道のすぐ脇に怪物が倒れている。その怪物の口の中へ、あなたの腕を、肘まで突っ込みなさい。それをやったら、われわれと一緒に帰ってもよろしい」
(中略)
五分後、ぶるぶるふるえながら、エッケルスは、戻って来た。その腕は肘まで真っ赤に濡れていた。両手にはたくさんの弾丸を握っていた。てのひらを開いて、それを見せてから
、エッケルスは倒れた。倒れて、しばらくは
、身動きもしなかった。
「こんなことをさせなくてもよかったのに」と、レスペランスが言った。
「そうかな?まだ分からんさ」トラビスはピクリとも動かないエッケルスの体をつついた
。「大丈夫だ。この次から、この人はもうこんな狩りには出かけなくなるだろう。オーケ
ー」


経験を教訓に学ぶ、てのは人間の資質の一つだと思う。
功名心にはやり、臆病なあまり、
己の靴の裏の泥、だけは大丈夫、だと高を括
ってると、思い切り痛い目を見る、って事なんかな…?

小説の中で、エッケルスはこんなんでも人生の成功者だ。

ま、思ったのは、自分の身勝手な行動が何を生むかなんて、
ほんの目の前の出来事ですら人は気づかない
ってこったろーね。

例えその時はスゴく痛い思いをしたとしても
、もう二度と痛い思いは嫌なので、
同じ場所へは戻りたくない、と そんな風だから、
また 同じ事の繰り返し、
結局 学ぶ奴はほんの一握りの 魂に豪胆さを持ち合わせた輩だけだという…

小心者は所詮、器が小さくていっぱいいっぱい、ってことだから、

どう小ずるく生き延びるか、そこだけにご執心、って事。

こんなやつのおかげで未来が変わってしまった。

だから修復しなくちゃね、主役なんだし。

ガヤに、エキストラに足下すくわれてる様じ
ゃ間抜け。かなりの。

映画はこの後色々あるんだけど、
小説じゃ未来が変わって、どえらい事になっちゃって…

結末は、本編を…

どんなに許しを請うても、
決着を自ら曳かせてはもらえないわけ、

なぜなら、その原因という時の種を蒔いたのは そいつ自身だから…

発芽してからじゃ遅いから、蒔いた奴そのものごと 無かった事にされる、と。

タイムパラドックスです。
(−_−;)






※ 引用。小笠原豊樹 訳。