ここんとこ、読書するね、

『ブルー・ローズ』(ピーター・ストラウブ)
『母親を喰った人形』(ラムジー・キャンベル) とか…
超の付く傑作とされてる作品ばかりな筈なのにバカだから、全然アタマに入ってこない。どーしよ?
( ̄◇ ̄;)

そんな中、これは最高でした!短いし。

『帰還』(リチャード・マシスン、尾之上浩司訳 / 【運命のボタン】ハヤカワ文庫 収録)。

タイムトラベルもの?SF…だね…

※「二十五世紀の世界に行ったとき、何かしてほしいことはあるかな?」薄い唇の端を上げて、笑みをうかべた。
「ヒーローのバック・ロジャースに挨拶してきて」夫が時計を出すと、妻が答えた。メアリーはふたたび表情をくもらせ、小声で訊いた。「もうすぐ出発するの?」
「四十分ほどあとでね」
「四十分ーーーー」夫の手をつかんで頬に押しあてる。「本当にもどってきてくれるのね?」夫の瞳を見つめながら、彼女は訊いた。
「もどるよ」相手の頬をやさしくぽんと叩きながら、ウェイドは答えた。それから、わざと険しい表情をうかべる。
「ただし」と注文をつけた。
「夕食に、僕の嫌いなものを作ったら話は別だけれどね」※

結構ラブ・ストーリーです。

1951年の発表なので、
ヒーローがバック・ロジャース(w)ってあたりが時代。

…500年後の未来に到着はするにはしたんだけど、もう過去へは帰せないと云う…

その未来では、過去の人間を再生し歴史を記録することをしていて…

※「お気づきでしょうが、わたしたちはただの歴史の記録を蓄積するだけでなく、歴史にまつわる直接的な "証" も採取しています」
(中略)
「人間の人格は肉体がなくなっても、独自に存在しているのですよ。これがはっきりしたえおかげで、研究が進みました。肉体や環境にまつわる記憶が劣化しーーーその状態が不安定な状態におちいっていたとしてもーーー特殊な有機物と無機物を補給することで、元の状態に再生できるようになりました」※

簡単に言うと、死んだ人間、霊魂?の実体化って事らしい。

※「(略)…しかし、いつまでもその姿を維持できるわけではありません。あなたの時代から再生された人格の場合は、そう、四十五分ほどしかもたないのです」※

…愛する妻の元へ戻ろうと、あらゆる手段で帰還しようと試みるウェイド。

脱出はうまくいかない、
そこへ…

※「メアリー」救いのない恐怖にさいなまれながら、妻の名を読んだ。
するとドアがひらき……メアリーが入ってきた。
(中略)
しかし、いま抱きしめ、キスしているのはーーーもう死んでいる女なのかーーーという思いを、振り払うことはできなかった。
二人はすわったまま、だまっていた。刻一刻と、ウェイドの身体に緊張感がひろがる。あっというまなのか?崩壊は……どうやって、それに耐えればいいんだ?妻と離ればなれになるなんて、我慢できそうにない。
「赤ん坊のことを教えてくれないかい」恐れを忘れようと、話題を変えた。「男の子だったの? 女の子だったの?」
妻がだまりこむ。
「メアリー?」
「知らなかったの?そうよね、知らないはずね」
「なんのことだい?」
「赤ちゃんのことは説明できないの」
「どうして?」
「産まれたときに、わたしが死んだから」※

未来の、目の前のメアリーは、500年前の出発の時とほとんど同じ姿なんだから、そーいうことだったんだろね。

※「ぼくが帰れなかったせいなのか?」
「ええ」妻がそっと答えた。「あってはならないことだったのにね。でも、あなたなしで生きていけなかったのよ」※

それを聞き、なんとしても過去に戻り、未来を修正しようとするウェイド、

そしてついに500年前の…一時間後にはもどる筈だった過去へと【帰還】する。

※「メアリー!」
妻を大声で呼ぼうとした。彼女に伝えなければ。でも、声が出ない。喉の細胞が分解していくのが解 わかる。なんとか彼女のそばに寄り、こうしてもどってきたことを伝えたかった。
呼びかける。声が出ない。苦しみにゆがむ目から、やりきれなくて涙がこぼれた。戸口にたどり着き、部屋に入ろうとした。

「あなたなしでは生きていけない」

脳裏をよぎった妻の言葉が、胸をつらぬく。叫ぶと、熱い溶岩がたてる、ゆったりとしたブツブツというような音がもれた。
ウェイドはほとんど蒸発しかかっていた。絨毯の上に流れ落ちる朝霧のような残りかすになった彼の、黒い瞳が渦巻く霧のなかにうかぶ黒く光るビーズのように見えた。
「メアリー、メアリーーーー」ひたすら念じた。

「ーーーきみのことを、本当に、本当に愛しているよ」※


細部のディテールを読み込むと、本当に面白い作品、
端折り過ぎだけどこれ以上のネタバレは許して…
m(_ _)m


永遠の愛なんてどこにも無い?

ウェイドとメアリーだって、新婚じゃなく、子供が産まれる直前でもなく、結婚後もう20年も経つ関係なら、

こんなにも美しい純愛でいられた?

未来で、過去で、新しい人生を模索したのじゃないだろうか?

でも…

俺は信じるよ、こんな純愛。

俺が信じなきゃ、どーやって、どんな歌を歌うんだ?って話。

それに、そんな想いを俺は知ってるし、経験者は語る、って事だ。

大きなリスク覚悟で、その想いを貫き通そうと言うのだから、愛じゃなかったら何?

普通は皆様、 結構 途中下車だし、精算は現金で、だろ?

なんなら、初っからそろばんずく、ってのが本音じゃないか?

そんな奴がいちばん判るんだよ、どんなに繕ってもね、

愛のない相手と、金を数えて生きるか、

心底 惚れたのなら、無条件にその愛を貫くか、
ってことなんじゃん?

せめて最期の最後に、後悔しない相手と俺は純愛するよ、

そんな愛の歌を高野十座は、

…俺は歌いたいんだ。
(^_^)♡






※ 本文より引用。