"デートなんですよ、家へ帰ります…"

「何日生きる?」…
「3日から一週間…個人差がある…」…

…なんだろう…
美しいのに、何と怖い映画…

人類は滅びゆく"種"なのか…
崖から、集団で海に飛び込む…ネズミ!を思いました…

『渚にて』('59/米)は、そんな映画…

1964年、第三次世界大戦が勃発…
人類は核戦争により、オーストラリア周辺の一部を除いて全て滅んでしまった…

そして、未だ平和に見えるメルボルンにも、死の灰は迫りつつあり…
全人類滅亡までのカウントダウンは、刻一刻と近づいている…

途中…
恋をしたり、レースをしたり、美しい馬!だったり…
命の美しさと、人類の愚行、との対比!で、切なくもかなりの恐怖を掻立てられます…

画面から滲む、オーストラリアの自然が美し過ぎるだけに…
人間の愚かさもくっきりと浮き彫りにされる…
自分は、この映画をそんな風に観ましたか…

そして…この物語の中には、特筆すべきエピソードは多々あるんだけど…

レビュアーの皆様に語りつくされているであろう超名作の、そんな箇所にはあっさりとスルーして…

俺的に感じ入ったシーンと言うのが…

…死滅したはずのアメリカから届いた、解読不能の無電…
生き残った…タワーズ艦長(G ペック) 率いる米原潜は、サンフランシスコへと調査に向かう…

無人の街…人はもちろん、鳥も…犬も…猫も…おおよそ生物と呼べるものの姿は一切見えない…
廃墟なのに、何故だか…水力発電で電力だけは供給されていて…

そんなアメリカの姿を潜望鏡で観察する乗組員…

と、サンフランシスコが地元の水兵が艦から脱走!死の灰に晒された海面を…
一人泳いで港まで渡る時の会話が冒頭の台詞…

「デートなんですよ!家へ帰ります!」…

…艦にはもう水兵の収容はできない…放射能に汚染されているから…

暫く後…
…水兵はのんびりと陽の光を浴びて、クルーザーの上から釣り糸を垂れている…

…魚の釣れる気配はない…

海中からヌッと現れる潜望鏡とマイク…

「街の様子は?」…
………「全員死亡です。」…「家族も…よく見てません…」…

「風がないと上天気です……艦長の命令を聞かないですみません…
どうせ死ぬなら故郷で死にたいんです…」…

「戻らないぞ…」…「知ってます…」…

「病気になった時、薬はあるか?」…
「薬局は200もあります…」…

良いシーンです…苦しくも解るぞ!だから好きにしていいぞ!…
そんなでしょうか…

水兵の最期の台詞は…

………「…さようなら…」………

そして、艦からの艦長の別れの言葉は…

「見送ってくれ…」…


あっさりとした、あまりにも凄いこんなシーンに、
この映画の全てが集約されてるような気がしました…
個人的見解です…

原作は、ネヴィル・シュートの【渚にて】('57)。
映画と同じく、もちろん名作です…。

あーこれほどの映画…
この年齢になってやっと観たよ…

ビデオ屋で5年もバイトしてた割には未だ結構素人…

黒沢作品も、まともに観たことないし…
あ、スターウォーズも…

ビートルズすら聴かないし…

でも、嗜好方向はどれも同じ?

誰もが良い、と認めるものにはあまり興味を持った事がありません…

変わり者?

ですが…『渚にて』は、皆さん同様、自分もかなりお勧めします…

若き日の、『サイコ』でおなじみ、A・パーキンスも好い味出してますし…

必見…
(^O^)/



※ 「 」内台詞については、MGM版DVD【渚にて】より引用いたしました。