ランド・マスターは、ハリウッドの撮影所内で朽ち果ててたなぁ…
(T_T)

『世界が燃えつきる日』('77/米) 原作、【地獄のハイウェイ('67)】('72/ロジャー・ゼラズニィ著、浅倉久志 訳/早川書房) をlogる。

エア・ウルフの、"ジャン=マイケル・ヴィンセント"主演の映画ね。これはそれの原作。

ゼラズニィを読むのは初めてだな、あらすじはこんな…


愛車ハーレーを駆ってカリフォルニア一帯に略奪グループ《ヘルス・エンジェル》の名を馳せたヘル・タナーは、その抜群の運動能力をみこまれて、カリフォルニア政府からボストン向けペスト血清輸送の任務を託される。核ミサイル攻撃によって世界の大半が失われ広大なアメリカ大陸にたった二つ残った国の一つが、今、ペストで死滅しようとしているのだ。だが、大陸横断を試みる彼の行手に立ちはだかるのは〈呪いの横丁〉───放射能に汚染され言語に絶する危険にみちみちた、まさに地獄そのものの地帯だった。
(巻頭解説より引用。)


小説版だと、J・M・ヴィンセントのあの紳士然としたタナーとはまた違うね、かなりワイルドだぜぇ〜(by 杉ちゃん)


「物忘れのいいやつだ。きのう釈放されたとき、おまえはカリフォルニア国とある約束をした。その前に私用をかたづけたいとおまえが要求した二十四時間の猶予は、もうとっくに切れてる。もし赦免をとり消してほしいんなら、一言『いやだ』といえばすむんだぜ。たれも、むりにやれとはいってない。おまえがいやなら、ほかの仕事があるさ。死ぬまで、大きい岩をこまかく割って暮らす仕事だ。おれたちにゃ、べつにどっちでもいい。もう、おまえの代役も見つかったって話だぜ」
「タバコくれ」


この物語にはSF映画史上有名な"ランド・マスター"が出てくる。日本での人気も高い。小説ではこんな風…


この装甲車には窓がひとつもなく、真上と車の下の地面を含めた六方の外影を、TVスクリーンが映しだしている。タナーは、放射能から保護されたこのイルミネーション・ボックスの中に、ちょこんとすわったかっこうだ。かれの運転する"車"は、全長三十ニフィート、厚い強靭なトレッドのついた八個のタイヤをそなえている。装備は八門の五0口径機銃と、四門の擲弾筒。さらに、三十発の徹甲ロケット弾も積まれており、それを真正面および四十度までの仰角に発射できる。前後左右と屋根の上には、火炎放射管。そのほかに、段鉄でできたカミソリのように鋭い"翼"───基部で十八インチの幅と一インチ四分の一の厚みをもち、しだいに先細りしている凶器───が、地上と平行に、ニフィート八インチの高さで、まるまる百八十度の弧を描いて動く。車体と直角になった場合、それはフロント・バンパーの八フィート後方で、左右へ六フィートの幅に張りだす。突撃の場合には、槍の穂先のように前にも向く。横に切りはらいたいときには、側面からわずかに刃をのぞかせてもいい。車体は防弾保証、空気調節つきで、冷蔵庫と水洗設備を内臓している。運転者の左手に近いドアには、長銃身の三五七マグナム拳銃がクリップどめされている。前部席のすぐ上にある棚には、三0ー0六ライフル、四五口径オートマチック、それに手榴弾六個がおさめられている。


どんな車やねん!(; ̄O ̄)

主人公25歳のタナーは、ただの荒くれ者…チンピラじゃない。この未来の…荒廃した世界に於いても兄弟愛を忘れない。得てして英雄とは、漢(おとこ) とはそうしたものだ。


「そんなことを きいたんじゃないよ。つまり、兄貴のいのちが なぜそう気になるかってことさ」
「いいやつだからだよ。ただ、いまはスケにのぼせてるもんで、ちゃんと物が見えねぇ」
「だから、それがなんで気になる?」
「いまいったろう。やつは俺の兄貴だし、いいやつだ。好きなんだ」
「どうして?」
「ちっ、よせやい!ずうっといっしょに苦労してきた、それだけのことよ!おまえ、なにをやろうってんだ。おれの精神分析か」


性欲は愛とは違う。愛や友情の意味を、欲求と勘違いした者が、何かを成し遂げる立ち位置を 場見ることは生涯 無いだろう。

中央に選ばれし者は、気性の激しさだけでなく、必ず優しさをも持ち合わせているものだ。

しっかし…女で周りを見失うのは、洋の東西は問わないんだな。
(−_−#)


「……誤解するなよ。おれはむこうの連中のことなんぞ屁とも思っちゃいねぇ。ただ、なにもかもがこの〈横丁〉みたいになっちまうのが───丸焼けになって、ひねくれたくそ溜めに変わっちまうのが、気にくわねえだけだ。あの竜巻の中でもう一台の車が消えたときから、おれはちょいと考えさせられた……あんなふうに人間が、いや、なんでもだな───消えちまうなんて、いやなこった。絶好のチャンスがくりゃ、こういってたってトンズラするかもしれねえが、いまはまあそんな気持ちだな。それだけのことさ」


311以降も、以前と何も変わらないとしたら、よっぽどの平和ボケか、危機管理能力に欠けるおマヌケな奴、ってことだろうか…

それでも良い暮らし───物質的な───を目指す、女のケツを追い回す…この女のケツに敷かれてれば安心だと依存する…これはもう人類の種としての末期症状、絶滅種だ。ほんと。


「……かれらは射殺され、体を八つ裂きにされ、はりつけにされた。だが、わたしはべつだ。そう、わたしはべつだった。わたしは暴徒の側についた。そうして生きのびた。ベントン・ビル六0四号、生物学教室にいたわたしが」男はまたもや笑い声をあげた。
「つまり、友だちが殺されるときに、殺す手伝いをしたわけか?」
「友だちじゃない。専門がちがう。ほとんど顔も知らないぐらいだった」
「しかし、手は貸したんだな?」
「もちろん。だからこそ、こうして生きている」
「どうだい、生きている感想は?」


自分だけは別、アタシだけは特別な存在、そんな、自分の為だけの明日がいつまでも続く、とでも思ってる連中に聞いてみたいね、

「どうだい、今の人生の感想は?」


「そうじゃない。なぜおれといっしょにこねえんだ?」
「みんなが憎むから」
「気をまわしすぎだぜ」
「わたしはね、きみ、みんなが大学を焼いたときに手をかしたんだよ」
「だれにもいわなきゃいい」
ケニスはかぶりを振った。
「いすれはわかる」
「どうしてだよ、このとんちき。いってみろ、どうしてだ?」

「いずれはわかる。わたしが知っている」


良心の呵責ね、こんな風に気付けるならそれはもしかしたら幸せ。


「でも、ぼく飛びたいんだ」
タナーは少年を見てほほえんだ。
「だれだっていろいろしたいことがあるけど、なんかかんかできずじまいになっちまうんだな。空を飛ぶのもその一つさ。なにかほかのことにしろよ」
ジェリーはふいに下唇をとがらし、石をけとばしながら歩いた。
「だれでも若いときは、なにか特別なことをしたがるもんよ」とタナー。「だが、そうは問屋がおろしてくれねえ。不可能だってことがわかるか、それとも、ためすチャンスがなくて終っちまう」


したい事のやれてる人生は奇跡的だよ、だからこそ、心の苦痛や、飢餓感、いやな事から 逃げちゃダメだと思うんだ。

と、まあこんな様な、ペストの血清を運ぶ男の『ザ・ウォーカー』的お話。

興味 わいた方は是非 読んでみて。素晴らしい人生の一冊になるよ。
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〈なまえはコーネリア としもみょうじもどこの生まれかもしらんが ヘル・タナーの女だ おれはおまえがすきだった。〉


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※ 引用。