いや、シャレたわけじゃなくて、本当 たまたまなんですけど。
(^◇^;)


クリスタル湖キャンプ。二十年前、この湖でひとりの少年が溺れてから忌まわしい事件が相次ぎ、ある時期からここは閉鎖された。
〈血のキャンプ〉そう町の連中は呼んでいる。ところが今年から再会されるという。そして、指導員の高校生たちがやってきた。何も知らずに……。

そう、今日は13日の金曜日。


『13日の金曜日』(サイモン・ホーク著 / 大森 望 訳) 創元推理文庫('88)裏表紙より、誤字ママ引用。


ストーリーは割愛ね、つまりはこのまんまのお話、皆様ご存知だと思うので。

この"小説版『13日の金曜日』は、サイモン・ホークの著作の全訳版、てことみたい。

『ギャラクティカ』のノヴェライゼーションや、知らんけど『タイム・ウォーズ』つーシリーズで有名な方だそう…

やっぱ、ただ訳した、ってのとは違って、こう…きちんとした、つーか、読み応えのある仕上がりになってるよね、


プロローグ

物語には夜こそもっともふさわしい、
夜の闇は深い。
暗闇にひそむ目に見えないものを、あなたは想像する。昼間は聞こえなかった音が、夜には大きく響く。意味ありげに、そして不吉に。寝室のドアの向こうから聞こえてくる植えこみのかすかなざわめき、階段のきしみ。きっとただの風、きっと古い家が自然にきしんだだけ。たぶんきっと……。しかし夜の音は神経を乱し、闇の中のざわめきは目に見えないものを想像させる。想像力は闇を食べて太る。そして想像力は、夜、腹をすかせている。

なんか引き込まれる。小説、って感じがする。
d( ̄  ̄)

オーエン・ウエスト(クーンツ) の『ファンハウス』('90、扶桑社ミステリー) とは違って、映画本編以外の サイドストーリーは無い。

読んでると、映画('80)のシーンがそのまま頭に浮かんで来るね。このノヴェライゼーションは、その映画公開後、七年経ってからようやく刊行されたもの。映画の台詞そのままに、情景や心理描写を膨らませていった著者の手腕には敬服。

映画をまだ観たことない、って人は、レンタルに『13金』のPart1〜3までを凝縮したかのような、
俺的にはかなりの力作!のリメイク版 が、たぶんあると思うので 是非観ていただいて、で、この小説も読んでもらうとイイ気がする。

今でも『13金』ものはどれも、そんなお高くなく入手可です、はい。
(*☻-☻*)


だが、ミセス・ヴォリーズ(公式にはボーヒーズ) いっこうに出ていく気配を見せなかった。
「ああ、だからこのキャンプは!スティーブは再開したりしちゃいけなかったのよ。いままでだって、事件はいやというほどあったのに。ここで小さな男の子が溺れ死んだのは知ってる?その次の年にはふたりの学生が殺された」
ミセス・ヴォリーズの声が急にとげとげしくなった。
「指導員たちが注意を怠ったのよ」
アリスは目を見開いて、ミセス・ヴォリーズを見つめた。
「男の子が溺れているとき、指導員たちはセックスしていた」
彼女は、「セックス」という言葉をなにかおぞましいもののように発音した。ぎらりと目を光らせて、
「男の子はジェイソンという名前だったわ」
アリスはぽかんとしていた。いったいなんの話だろう。どうしたの、この人?早くここから逃げ出さなきゃいけないっていうのに。

だが、言葉は出てこなかった。こぶしが彼女の心臓をぎゅっとわしづかみにし、ぎりぎりと締め上げているような気がした。
「事故のあった日、わたしは食事のしたくをしていた」
そういいながら、ミセス・ヴォリーズはこちらに向かってきた。目はうつろで催眠術にでもかかっているようだ。
「わたしは料理番だったの」
いきなり彼女はアリスの腕をひっつかんだ。万力のような指が、ぎゅっと肉に食いこむ。アリスは息を吞んだ。ミセス・ヴォリーズはおこりにかかったように激しく首をふり、歯がかたかたと音をたてた。
「だれかがジェイソンのことをちゃんと見ていてくれたらよかったのよ!そうすればあの子も……ジェイソンは……」
その声は途中でとぎれ、だしぬけにミセス・ヴォリーズはアリスの目を見すえ、はじめてはっきりとこちらを見た。表情がやわらぎ、そこにぞっとするような笑みが浮かんだ。唇は動いているが、不気味な光をたたえた目は、じっとこちらを見つめたまま。
「ジェイソンは泳ぎが得意じゃなかったわ」
そういって、ミセス・ヴォリーズはけたたましく笑いはじめた。

狂人の笑い。
「さあ、行きましょう」
うそっ。そんな、まさか……。アリスもぼんやりと真相が見えてきた。
「あの……クリスティさんを待ったほうがいいんじゃないでしょうか」
アリスは必死に声をおちつかせようとした。
ミセス・ヴォリーズはまたけたたましく笑って、
「まあ、そんな必要はないわ」
「あの……でも、どういうことなんですか」
と、ゆっくりあとずさりながらアリスはいった。
「ジェイソンはわたしの息子だったの」
ミセス・ヴォリーズは、またあの、遠くを見るような放心した目つきになった。
「そして、今日はジェイソンの誕生日」
「クリスティさんはどこです?」とアリス。
だが、ミセス・ヴォリーズは聞いていない。
その焦点の定まらない目は、過去の情景を映していた。両腕をふり回して弱々しく湖面をたたき、水しぶきをあげながら、「助けて、ママ!助けて!ママ、助けて」と叫んでいる男の子。

その子は助けを求めて叫びながら溺れ死んだ。それまで一度も叫び声をあげたことなどない子だった。いつもひとりで、黙りこくったまま、口をきくことも笑うこともなかった。ほかの子供たちとは切り離された、奇妙な音のない世界で、いつもひとりきりだった。


こうしてみると、誰が加害者で、誰が被害者、かなんて誰にもわからない。

ヴォリーズ夫人が復讐を考えたのも、自分ならどうするか?と思えば、あながち他人事とは言えない。

よくいるじゃない?自分だけが正義、傍観者のふりで実際は共犯、実はそいつが諸悪の根源、てやつがさ、

サイコパス、を文章にしたら、モロこんな感じか?


にっこりほほえむと、ミセス・ヴォリーズは悲鳴のした方角に走り出した。手には刃渡り八インチのハンティング・ナイフ。その唇は、のどの奥から小さな子どもの声でつぶやきつづけていた。
「殺して、ママ。あの女を殺して」
ミセス・ヴォリーズは速度をあげた。
「逃がさないで、ママ。殺して」

「ええ、ジェイソン、逃がさないわ」


13日の金曜日に、小説『13日の金曜日』をLog.ってみました。
m(_ _)m

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※ 引用。