それは、油まみれの簡素なテーブルの版材の上であおむけになっていた。ブロンズの氷斧の折れた柄が、奇妙な頭蓋に食いこんだままだ。狂気と憎悪をみなぎらせた三つの目が
、めらめらと燃えあがり、鮮血のように輝いてる。頭をとり巻いているのは、くねくねとからまりあった吐き気をもよおす蛆虫の群れで、髪の毛があるべきところに青い虫が這いずっている──
(中略)
ブレアーは釘ぬきハンマーを握った。鋼鉄の爪が、そいつを閉じこめている氷をガリガリと削り、二千万年ぶりに、氷がそいつから剥がれてく───


これは、【影が行く】
(ジョン・W・キャンベル・ジュニア著、中村 融 訳 / 創元SF文庫)、
こっちの方が通りがいい? 映画、J・カーペンター『遊星からの物体X』('82/米)の原作とされてる小説の一節ね、

南極で、知的生命の乗った氷漬けの宇宙船が発見され、乗員らしき物体を、基地に回収してみたはいいが、二千万年も経ってるにもかかわらず、そいつは生きてて…基地内の人間に次々寄生し、どの時点で誰がその宿主(しゅくしゅ) なのかわからないから、疑心暗鬼から人間、宇宙生命体入り混じっての殺戮が、孤立した南極基地、という密閉された空間で繰り広げられる、つー…簡単に云えばそんな話。

中編小説。


「怪物の犬と本物の犬は見分けがつかなかった……」

犬は、急速に変異していた。


「近づくな───近づくんじゃない───吸収されないぞ───されるもんか───」

周囲の人間を信じられないと 隊員の一人(俺か?)は、自分みずからを隔離し、誰も近寄らせない…


「(略)………あの怪物は戦わないんだ。戦ったことがあるとは思えない。温和な生きものなのさ、あいつなりの───独特の───流儀でだが。戦うまでもなかったんだ、別の方法でかならず目的を達したのだから」

人間(仲間) に成り済まし、じっと様子を伺う。探しているのは肉なのだ───自分に取り込める肉────…


「なんてこった───あの怪物は芝居ができるんだ。ちくしょう───」


あれ?俺、こんな実際知ってるなぁ…

こんな化け物に襲われた哀れな犬、人間を見た事がある…


…四本ある触手のような腕の一本が、毒蛇のように遅いかかってきた。触手のような指を七本生やした手には、長さ六インチのピカピカと金属光沢を放つものが握られており、それが三人にむかってふりあげられた。怪物の線のように薄い唇が、憎しみにゆがんで蛇の牙からまくれあがり、赤い目がギラギラと輝いた。

狭苦しい屋内でノリスのリヴォルバーが轟音を発した。憎悪にゆがむ顔が苦悶にひきつり、のびていた触手が引っこめられた。握っていた銀色のものは砕けちり、七本の触手を生やした手は、黄緑色の体液をにじませる、肉のかたまりとなった。
リヴォルバーがさらに三度、轟音を発した。三つの目のそれぞれに黒い穴をうがってから、ノリスは空になった武器をそいつの顔に投げつけた。

怪物は狂暴な憎しみに駆られて絶叫し、鞭のような触手が見えない目をたたいた。つかのまそいつは床を這った。触手が激しく暴れまわり、体がピクピクとひきつった。と思うと、またよろよろと立ち上がり、見えなくなった目を煮えたぎらせた。つぶれた肉がヌルヌルした肉片となってはがれていく。
(中略)
…床の怪物が金切り声をあげ、触手をやみくもにふりまわしたが、ブロートーチの炎を浴びて触手は焼けただれるだけだった。怪物は這いずり、床をころがった。狂ったように金切り声をあげ、あがきまわった。しかし、マクレディはそいつの顔から炎を一瞬たりともそらさず、死んだ目がむなしく燃えて泡立った。怪物は死に物狂いで這い、咆えた。

触手が鋭いかぎ爪を生やし───猛火につつまれて焼け落ちた。マクレディは冷静に冷静に動き回り、殲滅作戦を展開した。怒り狂った怪物は、うなりをあげるトーチと、のびてくる炎の舌を前になすすべもなく後退した。一瞬、そいつは反撃に転じ、背すじの凍るような人間ばなれした憎しみの声をあげた。


…現実…なんなら予言?かと思った。

別に、外宇宙の生命体に置き換えただけで、これは俺も経験あるから他人事とは思えない…

俺はこの化け物(♀) に出会った事がある。
( ̄◇ ̄;)

最後の結末までが現実なら、被害者はこれ以上 拡がらないだろうに…

"物体X"は、あなたの隣のパートナーかもしれない…

読み終わったあとは、啓蒙いたしました。
m(._.)m

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『影が行く』(ジョン・W・キャンベル・ジュニア著、中村 融 訳 / 創元SF文庫) より引用。