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「長椅子の上には、玩具にまじって各種の硬貨もちらばっていたが、しかし彼は、これには少しも注意をはらわなかった。私はその中から、よごれたクラウン貨と、まあたらしいニ四クロイツァー貨を一枚ずつ取り上げ、この二枚のうちどちらが好きかと彼にたずねてみた。彼は、小さな、ぴかびかするほうを選び、大きいほうはみにくいと言いながら、いやな顔をした。そこで私が、実は大きいほうが価値がたかく、小さいほうよりもずっと立派な物が買えるのだ、ということをわからせようとすると、注意ぶかく耳をかたむけ、すぐにじっと考えこんでいたが、しかし結局は、私が何を言おうとしているのかわからずにいるのだった。」

読む前に貸してた本が帰ってきた、【カスパー・ハウザー】('91/福武文庫)

この本は、1832年に刊行されたものの完訳版 とかで出版されてる。

【カスパー・ハウザー】には昔から興味があった。【サン・ジェルマン伯爵】と同じくらい。

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1828年5月26日の夕方、ニュルンベルグの町に、突然、降って湧いたように見知らぬ少年が現れる。

その少年は 奇妙な姿勢で立ち、歩こうとするのだが、まるで泥酔者のように直立することも足を満足に操るのもままならない。

市民が近づくと、少年は"第四騎兵中隊長" W大尉 宛の手紙を差し出す。

…大尉の家まで市民に連れられ、ドアを開けてくれた従者に向かって少年はW大尉宛ての手紙を差し出すと、同じ言葉を繰り返すばかり、

従者が、一体何が望みか?と質問をしても、この少年は、どんな質問の意味も理解していないようで、よろめき、苦痛に泣きながら、傷んだ足を指す仕草をする…

空腹なのか?と、一片の肉を食べさせれば、一口で身震いし 顔の筋肉が激しく引きつったかと思うと、仰天して肉を吐き出し、

その口が発するのは、泣き声か悲鳴か、意味不明の音(!)、もしくは同じ言葉の反復、

少年は、耳は聞こえても理解せず、目は見えても識別せず、足は動いてもすんなり歩行出来ない、そんな様子だった。

パンと水以外口にしない、推定15〜6歳くらいに見える この奇妙な若者、紙とペンを渡すと、不器用に指に挟み、"Kasper Hauser" と、しっかりとした読みやすい文字で綴る。

こうして【カスパー・ハウザー】の数奇な運命、人生が始まるのだけれど…


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なんなん?この本、結末無いやん…
(´?д?;`)

百何十年も前の本、この著者の完訳が珍しい、てのも解るけど、

'91年に出てんだから、【カスパー・ハウザー】がどんな生涯を終えたか、くらい 今では判ってることくらいは、一冊に まとめて出版してくれたらいいのに…
( -д-)ノ

ま、解説によれば、【カスパー・ハウザー】は、
この突然の出現から数年後に暗殺されたらしいんだけどね、たぶん。

その辺を詳しく知りたかったじゃん、

だって、パンと水だけで 15〜6年も 穴蔵で座って(!)生活し、突然世の中に現れたか、と思えば、あっさり殺される、て…

一体どんな人生?

楽しみにしてた本なのに、結末まで届いてないので50点です。
(。・ω・)ノ゙


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1829年8月、よく晴れた夏の夜、

ダウマー先生(保護者)が初めて星空を見せた (どうやらカスパーは、夜は薬で眠らされていた上に、穴蔵から15〜6年も出た事が無かった。) 日のこと、

そのときのカスパーの驚きと狂気のさまは、筆舌につくしうるものではなかった。

「あれは私が世間で見たものの中でいちばん美しいものだ。しかし、こんなに沢山のきれいな灯を、誰があそこにかかげたのか?誰が灯をつけ、誰が消すのか?」


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どんな嘘つき、偽者の鳴らす音より、おもて面だけの絵描きの描く風景より、

【カスパー・ハウザー】の言葉は心に響く…


彼は何故殺されたか?

生まれながらに幽閉されなきゃならんほど、高貴な血を持つ人物だったか、 稀代の詐欺師か、

そのどちらかだったから殺された、と云われてる。


何にしても、心打つ発言は その程度の作り物じゃない。


本物とはそーいうもの。

触れることは叶っても、成ることは及ばない…





※【カスパー・ハウザー】('91、福武文庫/A・v・フォイエルバッハ 著、西村克彦 訳)



※【カスパー・ハウザーの謎】('74/西独) DVD出てんの?欲しくないけど、み、観たい…
(*^・ェ・)ノ