高野の爺ちゃん…

エイジと言うカッコ良い名前…
寡黙な人で、不言実行を絵に書いた様な人だったな…

俺の父親と離婚した母親…
本当にガキの頃…まだ2〜3歳の頃…母親が弟の父親と再婚する前に、一時期、高野の本家横の長屋?みたいな処に住んでた事があって…

白黒の牛!黒ちゃんとか言う…が、一頭!居た様な?…まだ掘りごたつと土間の時代…
…「ご飯〜っごは〜んっ」て鳴く猫…ソロとイリヤ(どっちかだけそう鳴く)がまだ居た頃…

爺ちゃんの思い出、エピソードはいつも鮮明…

まだ、小さくて…本家でお世話になるにも何だか居心地悪くて…
よそ行きの気分で、一言も誰とも口をきかないし、食事もほとんど喉を通らなかった…

九州だから、あまり納豆を食べる習慣がなかったんだけど…俺の為だけに納豆出してくれたりして…
…あんまし元気がないから、爺ちゃんは鉄砲撃って"雀"を猟してきてくれたり…

その"雀"は、多分…俺を元気づけようと…爺ちゃんの考えたイベントだったのかな…?近くで、パーンパーン!って、鉄砲の音…

でも、ドブ臭くて食べれたもんじゃなくて…
無理矢理口に入れられて、ますます凹む…みたいな…

それ迄住んでた、東京蒲田には、父方の従姉妹達がいたし…写真も、楽しい記憶もある…
やっぱ地元を離れていきなり…友達も、知ってる人も誰も居ない場所、つーのは結構きつかったんかもね…

あ?でも、G兄が居たんだ!
あの頃だよ、G兄と毎日一緒に過ごす様になったの…

それから…段々、少しづつ俺は本来の自分を取り戻して…G兄とやんちゃな毎日を過ごすようになって…

…それでも、爺ちゃんは怖かったし、何しろ威厳があった…一族の長としての責任を体現したその背中…
子供ながらに…カッコ良さと、畏怖(いふ)の念があった…

でも、そこはそれ…
本家裏に住むG兄と、毎日あばれ回る日々から…爺ちゃんに「10円ちょうだい」…と恐る恐るおねだりできるまでには慣れて…

そしてやっぱりまた…一族に慣れて来た頃には別れがあって…

…爺ちゃんと風呂に入って、頭から湯船に浸かっちゃって、脚バタバタ暴れて死にそうになって…
爺ちゃんは、遊んでるとでも思ったらしい…

窒息寸前に異変に気づいてか、バサーってお湯から顔上げてもらって…
ガキの頃って、頭デカいじゃん…だから自分から起き上がれなかったんだよね…
あれ、独りなら死んでたな…

それがあってからは、爺ちゃんと風呂に入る機会はなかなか少なくなって(覚えてないだけかも)…

…しばらくして、母親は再婚して、俺を連れ、高野の本家を出て行った…

同じ福岡だけど、再婚相手と同棲するために、随分遠くに引っ越して…
俺はまた、独りで…誰とも口をきかない毎日に戻って…

半年、そこに居たのかな?…また、引っ越し…今度は愛知へ…

誰とも口をきかないその時期、本家からすんげー遠いはずなのに、何度かG兄だけはチャリで訪ねてきてくれて…
愛知に発つ日が近いある日、G兄は、カブトとクワガタ…約束の…持ってきてくれて…

…それが、覚えてる…爺ちゃんの居た頃の故郷…

今はね、思う事はたくさんある…
やっぱ、爺ちゃん知ってる最後の世代だし…なんかあると、爺ちゃん思い出して…まだまだ、負けてたまるか!って思うもん…

爺ちゃんの血が流れてるんだから、俺にだって出来る!ってね…

…爺ちゃんと会ったのは入院先の病院が最後…
「爺ちゃん!」って、顔見せたら、初めて笑ったよ、うっすらと…随分きつそうだったの忘れない…

見舞いの林檎だかミカンだか、自分は全然食べられないから、って母親と俺が見舞う度に持ってかされた…
あんまり、見舞いには来てくれるな、と爺ちゃんからお達しがあったらしくて…
きっと、誰にも…あまり弱った姿を見せたくはなかったのだろう…

最後までずっと、家長…俺には最後の最後まで偉大な爺ちゃんだった…

…母親が、立ち上る火葬場の煙を指差して…
泣きながら…「ほら、爺ちゃんが天国に上って行きよう…」…つってた…

そして、その翌年…
爺ちゃんの命日の翌日…俺はうちの父親違いの弟に出会うことになる…

爺ちゃんの命日(10/5)の翌日が、うちの弟の誕生日…

だからかな?この時期には何故か爺ちゃんをよく思い出す…

俺は、爺ちゃんもばあちゃんも大好きだったな…
あ!ばあちゃんの積もる話はまた今度…

待ってて…